仕事や生活の変化をきっかけに、40代から運動を始めたいと考える方もいるでしょう。一方で、久しぶりに体を動かす場合は、若い頃と同じ内容を急に再開するのではなく、現在の体調や活動量を確認してから進めることが大切です。

40代という年齢だけで、行うべき運動や強度が一律に決まるわけではありません。これまでの運動習慣、治療中の病気、服用中の薬、関節の状態などによって、無理のない始め方は異なります。

本記事は、健康づくりを目的とした身体活動・運動についての一般的な情報です。個別の症状の診断や、治療としての運動内容を示すものではありません。治療中の病気や気になる症状がある方は、運動を始める前に医師などの専門家へ相談してください。

現在の状態を確認し、国の推奨量を参考にする

最初に確認したいのは、「以前どれだけ運動していたか」ではなく、現在の日常生活でどれだけ体を動かしているかです。直近1週間を振り返り、歩く時間、通勤、階段の利用、家事、座っている時間、定期的な運動の有無を整理します。身体活動には、ウォーキングや筋力トレーニングだけでなく、家事や移動などの生活活動も含まれます。

次に、運動時の安全に関わる情報を確認します。

  • 健康診断で要受診・要精密検査とされた項目がある
  • 高血圧、2型糖尿病、脂質異常症などで治療を受けている
  • 心臓や肺の病気、関節や腰の痛みについて通院している
  • 日常生活や軽い動作で、胸痛、動悸、強い息切れ、めまいを感じる
  • 服用中の薬がある
  • 運動で悪化する痛みや、最近のけががある

該当する項目があるからといって、すべての身体活動が禁止されるとは限りません。ただし、運動の種類や強度を調整する必要がある場合があります。自己判断で治療や服薬を中断せず、現在の状態と始めたい運動を医師へ伝えて確認してください。

国の推奨量は「初日からのノルマ」ではない

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」成人版では、個人差を踏まえて強度や量を調整し、可能なものから取り組み、今より少しでも多く体を動かすことを基本としています。

成人の目安として、歩行または同等以上の身体活動を1日60分以上、息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上、筋力トレーニングを週2〜3日行うことが示されています。また、座りっぱなしの時間が長くなりすぎないよう注意することも挙げられています。

この「1日60分」には、運動施設で行う運動だけでなく、通勤、買い物、家事などの生活活動も含まれます。運動習慣がなかった方が、初日から60分間の運動を行うという意味ではありません。現在の活動量が少ない場合は、生活の中で体を動かす時間を少し増やすところから始めます。

数値は、成人全体に向けた健康づくりの参考値です。個人に処方された運動量ではなく、体調が悪い日にも達成すべき目標ではありません。数字だけを追わず、体調と生活への負担を確かめながら調整してください。

少しずつ増やすための具体的な考え方

始める内容は、特別な器具が必要な運動に限りません。たとえば、いつもの移動に短い歩行を加える、昼休みに屋外を歩く、座りっぱなしの時間をこまめに中断するなど、現在の生活に加えやすい活動から検討できます。

運動として歩く場合も、最初から速さや距離を求める必要はありません。普段より少し長く歩き、終了後と翌日の体調を確認します。強い疲れや痛みが残る場合は、時間、速さ、頻度のいずれかを減らします。問題なく続けられることを確認してから、一度に一つの要素を少しずつ増やすと、何が負担になったかを振り返りやすくなります。

筋力トレーニングを取り入れる場合は、動作を急がず、呼吸を止めないようにします。自重運動や軽い負荷であっても、関節や腰に痛みが出る動作は中止してください。方法がわからない場合や、けがの経験がある場合は、医師や運動指導の専門家に確認します。

予定どおりにできなかった日があっても、別の日にまとめて量を増やす必要はありません。睡眠不足、発熱、強い疲労、痛みがある日は休み、体調が戻ってから負担の少ない内容で再開します。継続日数や消費カロリーを競うのではなく、日常生活に支障を残さない範囲を探すことが出発点です。

毎回の運動前後に確認すること

厚生労働省の安全に関する情報シートでは、普段の健康管理に加え、運動を始める前、毎回の運動前、運動中、運動後に状態を確認することが示されています。

運動前は、睡眠や食事の状況、発熱やだるさ、痛み、天候を確認します。血圧を測るよう医師から指示されている方は、その指示に従って記録してください。暑さや寒さが厳しい環境では、時間帯や場所、内容を変更します。

ある程度の強度で体を動かす前には、急に主運動へ入らず、ゆっくりした歩行や関節を動かす準備運動を行います。運動中も、予定した時間をこなすことより体調の変化を優先します。

運動後は急に立ち止まらず、歩く速さを落とすなどして徐々に動きを小さくします。厚生労働省の情報シートでは、5〜10分ほどのクールダウンとして低・中強度の動的運動を続けることが示されています。終了後にも、息苦しさ、痛み、強い疲れが残っていないか確認します。

異変を感じたら運動を中止する

運動中に次のような異変を感じた場合は、直ちに運動を中止してください。

  • 胸の痛みや圧迫感
  • 動悸
  • めまい、ふらつき、意識が遠のく感じ
  • 強い空腹感やふるえ
  • いつもと違う強い疲れ
  • 関節や筋肉の強い痛み
  • 冷や汗
  • 会話が難しいほどの息苦しさ

休んでも症状が改善しない場合や、症状が強い場合は、運動を再開せず医療機関へ相談してください。意識障害、強い胸痛、呼吸困難など緊急性が高いと感じる症状では、救急要請を含めて速やかに対応します。

痛みを我慢して動き続けることや、予定した距離や回数を優先することは避けます。症状がいったん治まっても繰り返す場合は、いつ、どの動作で、どの程度の症状が出たかを記録し、医師へ伝えてください。

治療中の病気や薬がある場合

高血圧、2型糖尿病、脂質異常症、変形性膝関節症などがあっても、状態が落ち着いており、身体活動を制限する理由がなければ、個人の状態に応じて体を動かすことが検討されます。ただし、合併症や痛みの状態によって注意点が異なるため、運動を始める前に医師などの専門家へ相談します。

服用中の薬も運動時の反応に影響することがあります。厚生労働省の情報シートでは、一部の降圧薬が心拍数に影響するため、心拍数だけでは運動強度を判断できない場合があるとされています。スマートウォッチなどの数値だけに頼らず、息苦しさ、めまい、疲労感なども確認してください。

受診時には、始めたい運動の種類、1回の予定時間、頻度、現在の活動量を伝えます。医師から運動に関する指示を受けている場合は、その内容を優先してください。体調や治療内容が変わったときは、以前の指示をそのまま続けてよいか再確認します。

記録して無理のない範囲を見直す

運動を始めたら、日付、内容、時間、体感した強度、運動中や翌日の症状を簡単に記録します。歩数や心拍数などの数値は参考になりますが、数値が増えたことだけで状態を判断しないようにします。

1週間ほどの記録を見返すと、疲れが残りやすい曜日、負担になった動作、生活に組み込みやすい時間帯がわかります。体調に問題がなければ少し増やし、強い疲れや痛みがあれば減らします。治療中の病気がある方は、記録を受診時に見せると状況を共有しやすくなります。

40代から運動を始めるときも、年齢だけで内容を決めるのではなく、現在の体調と活動量から考えることが基本です。国の推奨量は長期的な参考として捉え、まずは今より少し多く体を動かすことから始めます。異変があれば中止し、必要に応じて医療機関へ相談してください。